山里のたより No.4
就労継続支援B型事業所「スマイルコーン」
スマイルコーンでは、定期的に実習生を受け入れています。
新しい仲間を迎えた時の清新な雰囲気。メンバーのそれぞれの心の揺らぎ。あいさつや自己紹介を経て、実習生との距離感が縮まっていきます。また、実際の仕事を通してことばをかけあい、次第に実習生の気持ちに寄り添い、相互関係が築かれていきます。スマイルコーンの日常生活に新しい刺激が加わり、毎日が違った魅力を放ちはじめます。
先日、思いがけずうれしことが起こりました。実習生が、自然な口調で「○○先輩」と呼びかけました。相手のメンバーの方も「●●くん、どうしたの?」と返しました。「何してるの?」と尋ねると、メンバーの方は、持っていたゲーム機を見せました。この瞬間、なんともいえず、心地よい風が流れました。ふとした呼びかけが真心に届き、やまびこのように返ってきた瞬間でした。年齢が違う集団では、お互いが相手を思いやり、敬う、仲間の連帯感を育む大事なやりとりでした。同じ年齢の集団で生活する学校との違いが、垣間見えた瞬間でもありました。
今年の夏は、長雨や台風の襲来によって、日照時間も短く、作物の生育にも大きな影響が出ました。台風の風で、稲が倒伏し、お米の収量も少なく、カボチャやズッキーニなどの野菜も結実しませんでした。そんな中でも、順調に育ち、収穫に至ったのがモロヘイヤとブルーベリーでした。選別して寸法をそろえて、直売所に出しました。市場に送り出してからは、その売れ行きが心配になり、速報のメールを何度も確かめずにいられませんでした。
そうした折、ある直売所に生産物を納めにいくと、係員の方が「スマイルコーンの無農薬のブルーベリーについて、予約を受けているので、お客さんに入荷を連絡する」と言われました。納品に携わったメンバーと支援員(スタッフ)は、ハッとして、その一言に聞き入りました。手塩にかけた農産物を送り出すよろこびの先に、待っていて下さる消費者の方の笑顔があると思うと、嬉しさがこみ上げてきました。何だか、急にメンバーやスタッフ全員の顔が浮かんできて、この喜びを分かち合いたい気分になりました。また、帰り道、メンバーの「農作業への意欲が高まり、自信につながります。」ということばにも感じ入りました。
地下を流れる水脈が湧き出す泉に出会った時のように、今回の出来事は私たちの心に清冽な共感を呼び起こしました。それらの示唆することは、そのままこれからの農業に必要とされる、年齢を超えた世代間の「連帯」や「伝承」、生産物の流通過程を担う人たちとの「連携」、買って下さることで生産を鼓舞する消費者との「信頼」の重要性に触れた、誠に貴重な瞬間でもありました。