山里のたより No.3
就労継続支援B型事業所「スマイルコーン」
現在、スマイルコーンには、門がありません。しゃれた建物もありません。冷房設備や贅沢な備品もありません。もちろん、蓄えもありません。
しかし、悲観したり、卑屈になったりしません。むやみに明日のことを心配したりもしません。ましてや、よその事業所をうらやむことなどありません。
なぜなら、すてきな仲間がいます。やりがいのある仕事があります。あふれる笑顔があります。暑い季節には汗をかき、身体の自然な反応や新陳代謝を促すことで、体調を整えています。みんな今日を精一杯生きて、快い疲れを感じながら、家路につきます。実に爽快で、手応えのある毎日です。画面や紙くずの情報に一喜一憂することはないのです。
スマイルコーンには、訪問者が絶えません。
お隣の農家の方、お総菜を届けてくれる人、郵便や荷物を運ぶ人、看護師さん、ケースワーカーさん、ケアマネージャーさん、見学の方、実習生さん、ボランティアの方、篤志家の方、地域の方々など、さまざまです。人の往来が盛んで、次から次へと訪ねてみえます。この何もない古民家に。
そういえば、禅の問答の中に、「大道無門」という教えがあることを思いだしました。「大道は四方八方開けっ放しであり、どこからでも出入り自由である。何ものにもしばられず制約も受けない絶対自由の境地。」「いちいち開け閉めして通る門や人・物を監視する関が設けられていない大きな道は、人の往来が自由で、おおらかな繁栄の気が満ちている。」というのが、おおよその意味だったように思います。そんな大いなる道は、誰もが歩きたいと思う道ですが、いつも小道で迷っている私たちには、ついぞ届かぬ永遠の夢にも思えます。大道にたどりつくためには、まず、自分が背負っている過去からの荷物や重責をすべて取り払う必要があります。なぜなら、私たちが歩いている道は小さく狭いので、背負っているものが邪魔をして、大道に進めないというのです。知らぬうちに背負っている重たい荷物が、日々の怒り、妬み、争い、不安などの根源になっているので、まず、重荷を手放し、自分自身の自然な状態を取り戻すことが大事で、これこそが大道に至る極意であるというのです。
また、道を狭くし、門を閉じているのは、実は自分自身なのだと気づくことも重要で、自分が設けている内なる門を探し、自分のペースで行いを改め、門を開いてみることが、「ふところが大きく何でも受け容れる心の大きい」人になれる第一歩になるとされています。なんとも、深い教えではありませんか。
ともあれ、メンバーの皆さんも大道に向かうために、まずは、何もないスクールコーンという「道場」で、勤労という「修行」に、今日も精を出そうではありませんか。